Q. レポートの中身が引用だらけ!どうしたらいい?

【1.引用だらけ問題を解決しよう】
レポートを書いていて、引用だらけになってしまうことってありませんか?「自分はこの分野の専門家ではないから、専門家の意見以上に載せるべき独自の意見なんてないよ」。そんな気持ちになって、一体どうやって何を書けばいいか、分からなくなる人は、少なくないようです。

しかし、レポートを書くにあたって、知識面で専門家を上回らなければ自分の意見を書けない、なんてことは、勿論ありません。そんなこと言っていたら、一生書けないかもしれませんよね。このページでは、「引用だらけ問題」を解決するためのヒントをお示しします。

【2.レポートの基本を思い出して!】
まず、よくあるNG例として、問題点がたくさん挙げられているだけで、考察がされていない場合があります。レポートの基本は、「問い+答え+答えを導く議論」です。つまり、レポートの読み手は、問いが提示されたら、「この筆者はそれに対して、どう答えたのかな?」という観点で読み進めます。問いが挙げられたのに、それに対する答えが示されないままレポートが終わってしまったら、それは、レポートとしては破たんしているという印象になります。広げた風呂敷は、しっかりたたみましょう。

そしてもちろん、その答えを導けるなりの論理が示されている必要がありますよね。「なんとなくそう思ったから」じゃ、多くの人に共有できる考えとは言えません。したがって、問いを立て、答えを示し、どういう議論によってその答えが導けるのかを、なるべく分かり易い形で示しましょう。この流れを守っていれば、安心です。

【3.正しい問いの立て方がカギ!】
レポートの基本をおさらいした上で、「そんなことは分かっているんだけど、それでもどうしたらいいか分からない!」という場合は、次の2つのパターンのうちのどちらかに当てはまることが多いようです。第一に、問いが明確ではない。第二に、問いが広すぎる。

【3.1.明確な問いを立てよう!】
1つ目の、問いが明確ではない、というパターンについてですが、問いが曖昧なら必然的に、レポート自体の着地点も曖昧なはずです。ぼんやりした問いに対しては、どう答えるのが正解なのか、分からないですよね。そんな問いを投げかけられたら、読み手は、混乱します。

そもそもレポートを書く過程で、答えを導く議論のために、どの資料を使うべきかを決められないのではないでしょうか。調べれば調べるほど、すべての情報が関係している気がして、そのすべてをとりあえず引用すると、字数が埋まり、「とりあえずこれで完成ということで。。」と、なっていませんか?引用をする際には、引用の目的を明確にしましょう。目的の曖昧な引用によっていたずらに文字数が増えると、読むほうも大変です。

引用、つまり他人の言葉は、自分の主張の根拠として利用できますが、それを使って答えを出すのは、自分の仕事です。自分が考えた議論の流れの中に引用を位置づけ、自分の言葉で結論を導きましょう。そのためには、自分の中で、何を問うているのか(何を明らかにすればゴールなのか)を、はっきりと意識するところから始める必要がありますね。

【3.2.焦点を絞った問いを立てよう!】
問いが広すぎる場合のNG例として、「SFC生の問題点は何か」といったものがあります。これは曖昧な問いの立て方ゆえに、あらゆる問題を羅列するだけで終わってしまう可能性大です。また、読み手がタイトルから想像する内容と、レポートで扱う内容とがズレている可能性が大きく、その場合、抜け漏れがあるという印象を抱かれてしまいます。

ですので、あらゆる問題を羅列することは、レポートを書き始める前に済ませましょう。それは、レポート自体ではなく、メモなのです。羅列した問題から、扱うテーマを決めて、焦点を絞ると、具体性のある良いレポートになるでしょう。問題の多様性についても言及したければ、「〇×△~~~のように様々な問題があるが、その中でも~という理由から、~においては、~が特に重要であるといえる。そこで、今回はその~を検討する。」とするのもいいですね!

または、その多様な問題すべてをまとめ上げてみる方法もあります。つまり、「〇×△のように多様な問題があるが、それらを引き起こす共通の要因は何であろうか。」といった問いの立て方です。ただし、この方法をとる場合、見るべき資料が多く、難易度が高く(様々な資料を見ている過程で様々な知識が求められ、それを習得するための時間も必要になるかもしれません)、分量も増えるので、その点は覚悟して早めに取り組みましょう。

【4.分かり易い問いの立て方の例】
それでは、具体的には、どのような問いが立てられるでしょうか。それは、人それぞれです。自身の経験や、これまでに学んだことを生かして、考えてみてください。ここでは、2つだけ、無難な問いの立て方の例を挙げます。

【4.1.既存の議論2つの比較】
複数の文献を参照し対立させると、出てくる答えは明確なので、レポートがすっきりします。たとえば、「AとBの結論(意見)はどちらが妥当か」という問いの立て方ですね。そのときの注意点は、参考資料で既に提示されている結論のみを示すのではなく、それぞれの結論がどのようにして導かれているのか、その過程をよく読んで検討することです。例えば、「Aは人口規模を検討して~~という結論を導いているが、そこに年齢層の検討がなされていないのは不十分である。年齢層別に考えたらむしろBが妥当である。なぜなら…」というふうに、検討できます。

このように比較する場合、結論として、どんなパターンがあると思いますか?例えば、「Aのほうが妥当である」、または、「Bのほうが妥当である」、もしくは、「AとBどちらも妥当でない」というのは、無難なラインですね。すっきりしていて分かり易いと思います。

でも、その他にもありますよ。「AとBの意見対立の原因は~そのものについてではなく、それ以外の点にある」と気づいたのなら、その発見自体を報告してもよいでしょう。「AとBは、~の観点からみると、実は同じことを言っている」という結論もあり得ますね。はたまた、「実はAかBかという問題ではないのではないか」という気づきに至るかもしれませんね。レポートはゲームではないので、勝ち負けを無理矢理につける必要はありません。問いを立て、何かしらの答えを論理的に提示することを、大切にしてください。

【4.2.既存の議論がほかの場合にも当てはまるかの検討】
例えば、A市、B市、C市で成功することが実証された理論があるとします。それが一般的に、まるで万能の方法論のように語られているかもしれません。そんなとき、「うちの地元でも当てはまるのか?」などと関心を持つことができれば、それは、1つの問いとなります。専門家の立てた問いをそのまま使い(そのことは必ず明記してくださいね)、対象の部分を入れ替える、という方法です。D市、E市、F市でも同じ結果が導けるのだろうか?という問いの立て方なら、研究手法に関しても先人に倣うことができるので、良い勉強になりそうですね。この方法は、地域を入れ替えるだけではなく、時代や年齢層など、各要素に関して、当てはまります。

【5.まとめ】
書き始める前に問題意識を明確化し、〈問い、答え、それを導く議論〉を分かり易く書くこと。その中で、専門家による既存の議論をうまく利用して、自分だけのレポートを作りましょう。「自分ごときが論じるべきことなんてない」などと思わず、その時点で自分にある知識と能力で、頑張ってみてください。レポート作成の過程を繰り返していくうちに、だんだんと、良いレポートが書けるようになっていくはずです。立ち止まってしまったときには、遠慮せず、WRCに相談に来てくださいね。なお、引用文献の明記もお忘れなく!その際の重要なルールについては、別稿に譲ります!

文責:兼定愛
参考文献:慶應義塾大学教養研究センター監修 ; 慶應義塾大学日吉キャンパス学習相談員『学生による学生のためのダメレポート脱出法』 慶應義塾大学出版会、2014年。

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