論文の種類と位置づけ

本エントリでは、まず一般的な分野での論文の種類とそれぞれの位置づけについて説明する。分野による違いについては別途記すものとする。

「研究の種類」「用語集」もあわせて読んでもらうと良いかと思うが、ここでは主な論文の種類について述べる。一般的に論文と呼ばれるものは学位論文と学会等が発行する論文誌や学会発表での学会誌として発行されるものがある。学会という言葉もsocietyとconferenceで意味合いが違うので注意が必要である。前者がいわゆる学会組織の事で、後者は学術会議の事である。(学術会議にはsymposium、conference、workshopというように会議の規模によっても名称が変わる)

academic paperの種類としてはレポート、書評、研究ノート、学術論文などがあるがそれらについては「レポート・論文の種類」で述べることとし、ここでは一般的に論文と呼ばれるものに限って述べる。

論文の種類

原著論文

主に学術雑誌に掲載され、著者のオリジナリティを有し、著者がその成果のオーナーシップを持ち(plagiarismの恐れが無い、二重投稿でない)、原則的に未発表である事などの学術雑誌の規定に則る形で掲載されるものである。取り扱う問題が原則的に1つ(取り扱う問題が複数だと内容が発散し著者としての結論が出しにくいため、限定的に対象を絞っていたり)で、目的と結論が明確であること。結論を導くために調査・実験を行い、提案する手法や方法論が客観的に有効かを評価された上で論じられている必要がある。結論への過程に考察や残された課題についても言及されていたりする。また、論文で論じられている方法とその結果については、再現性があることが求められる。再現性とは、その手法を手順通りに再現した場合、同じ結果が得られる事が保証されている、という事である。論文の体裁は決められた規約に則り整えられ、厳格な査読システム(peer-review、double-blinded)を経て掲載される。そのため、原著論文が採録・出版されるという事は、該当分野の有識者によってその成果や有効性が認められた、という事である。

キーワード:「論文の構成・体裁」「査読システムが存在する理由」「未発表論文とは」「新規性」

原著論文と認められる論文とは

2015/3/26 追記

その論文が原著論文かどうかは組織によって異なる。
自分の論文が原著論文かどうか?を確認するためにはその組織に確認するのがベストである。
例えば、学位取得のために原著論文が必要、という場合。原著論文の定義は大学・研究機関によって違うため学位審査委員会あるいは学事事務部門に問い合わせる事が望ましい。
大学や研究機関によっては、あらかじめ指定する学会誌に掲載されるものであれば原著論文とみなす、インパクトファクターが○以上のものしか原著論文として認めない、一般的には原著論文とは認められないが当組織では原著論文として認める、など組織によって事情が異なっている場合がある。
つまり、その論文が原著論文として認められるかは都度確認する必要がある、と考える。

いくつかの学会の投稿規定にてどのような論文が原著論文として認められるかを調べて以下に記したので、ご確認頂きたい。

日本心理学会

1.1 投稿雑誌の種類と書式
1.1.1 “心理学研究”の原稿
(1)原著・資料論文
原著は,原則として,問題提起と実験,調査,事例などに基づく研究成果,理論 的考察と明確な結論をそなえた研究である。資料は,すでに公刊された研究成果 に対する追加,吟味,新事実の発見,興味ある観察,少数の事例についての報 告,あるいは新しい装置や方法の考案などの小論文である。

日本社会薬学会

5.投稿原稿の種類
(1)原著論文(Original article)
1)社会薬学に関する研究の成果であって、独創的な新しい知見をもつと認めら  れるもの。
2)社会薬学、社会薬学的活動に関する斬新な問題提起を行い、社会薬学、
社会薬学的活動の発展に寄与すると認められるもの。
(2)研究ノート(Note)
原著論文に該当するような完成度の高い内容ではないが、公表することに
よって社会薬学の研究、社会薬学的活動に資すると認められるもの。
(3)報告・資料(Report)
1)社会薬学に関連する報告や資料であって、その公表が社会薬学の研究、社
会薬学的活動に資すると認められるもの。
2)社会薬学に対する意見や活動を紹介し、その公表が社会薬学に対する理解
を深めるもの

日本人間工学会

原  著:
著者の研究成果をまとめた著述であって,新規性・有用性・客観性のあるものと する.和文抄録(5つ以内のキーワードを含む)・英文抄録を含め,原則刷り上 がり8ページ以内とする.
資  料:
実験,試験および調査によって得られた各種データをまとめたもので,研究・設 計・開発・評価等にとって有用な資料として参考になるものとする.研究の動機 (目的),方法には新規性を要求しない.和文抄録(5つ以内のキーワードを含 む)・英文抄録を含め,原則刷り上がり8ページ以内とする.

以上のように、学会などで定義が異なっている。

学位論文 (thesis)

学士論文 (Bachelor thesis)
修士論文 (Mater thesis)
博士論文 (Doctoral thesis, Dissertation)
原著論文に似ているが、論文の中で取り扱う問題が複数ある場合もある。体裁によっては原著論文を複数繋ぎ合わせたものもあるため、個々の問題が複数有り、それらをまとめており、考察・議論・ある一定の結論づけがなされる。特に博士論文はその傾向が強く、本人にとっての研究活動の総括という意味でレビュー論文に似ている。

その他の論文

広義の意味での論文の殆どは上述した2つ以外となる。厳格な査読システムを経らずとも発表する事の出来る冊子に掲載されるもの等、多くの論文形態は原著論文でも学位論文でも無い。

 

論文の違い

掲載論文(学術会議、学術雑誌)での投稿区分、掲載媒体での違い

会議録・議事録 (conference proceedings)
論文誌 (journal, transaction)
専門書 (Book)

論文の区分による違い

総説・調査論文 (review, survey)

総説・調査論文とは、特定の分野やテーマに関する著名な先行研究(原著論文など)を集め、体系立ててまとめることで、特定の問題へのアプローチや認識を整理し、それらの問題解決のための各種手法の有効性評価を行う事が目的。上で述べたように、その分野を俯瞰して捉える事が出来るため、その分野の研究を始める上での道標となる。何が解決されており、何がされていないかが明確になるため、次に解決すべき問題が浮き彫りになる事が期待される。あるいは、問題に対しての手法などが一定の成熟度を持っているかが確認出来る。この調査論文自体に新しい事実や成果の発表は無く、分野全体の概要を知る事が出来る、という位置づけ。

抄録 (abstract)
技術報告 (technical report)
ポスター (poster)
ポジションペーパー (position paper)
レター・論評 (letters)
論文 (Regular articles, Original articles)
短報・速報 (Brief communication, Rapid communication, short communication)
資料 (Technical material)
訂正記事 (Corrigendum, erratum)
簡易論文 (short note)

長さによる区分

ショートペーパー (short paper)
おおよそ2~6ページのもの

フルペーパー・ロングペーパー (full paper, long paper)
おおよそ6~12ページあるいは制限がないもの

査読の有無による区分

査読付き
査読なし

その他のキーワード

CI、IF、採択率、出版社(Springer、エルゼビア、ACM、IEEE など)

参考資料

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