先行研究調査の重要性(情報分野)

先行研究を把握する・調べる ー「サーベイ」の重要度

「研究の進め方」がしっかり身に付いていれば文献検索が研究活動において大変重要なプロセスであることが理解出来るはずです。(文献調査>研究テーマの選定>問題の設定とアプローチ手段の決定>実験・評価・結論>テーマ・問題の再設定や手法の再検討、考察、残された課題の洗い出し)

研究分野の最新トレンドを把握したり、実際に自分の研究テーマを模索する上でも既存の研究について大まかでもいいので全体像を把握する必要があります。調べたい分野について、全くの素人の場合、どのような文献から手につけていいのか、どのようなデータベースを利用して探せばいいのか?が分からない事が多いです。

「研究の進め方」で、研究に適した環境に身を置くことの重要性として、研究室・ゼミに参加する事があります。研究室では、近い分野の研究者が集まっているため、先輩方や先生に聞くというのが一番の近道でしょう。研究分野の競合相手ならいざしらず、研究仲間なわけですから、一緒に議論したり、テーマについて掘り下げていける事でしょう。その中でキーワードやチェックすべき文献や学会などについて参考になるコメントを頂けるかもしれません。これらについて自力で探せる事にこした事はありませんが、聞く事で情報が得られるのであれば積極的にコミュニケーションをとりましょう。一見、一番稚拙な方法と思われがちですが、人から聞くという方法は大変有効です。直接アドバイスをいただける環境と機会があるのであれば、積極的に利用しましょう。そのために学会に参加するというのも良い手段です。

では、それらの形で情報が得られない状況においてはどうすべきでしょうか?取っ掛かりやすいという意味で、書籍、新聞、雑誌、ウェブという文献にあたることになるでしょう。特に興味のある事が身近なものであればあるほど、論文よりも新聞、書籍、雑誌、ウェブの方が適しているかもしれません。論文は専門性が高すぎて、前提知識が無いと理解出来ない事も少なくありませんし、研究対象や問題点が絞られて論じられています。また掲載されるまでのプロセスに時間がかかるため、本当の意味でその研究分野のホットトピックであるかの判断は難しいです。研究を進めていく序盤で、もっと俯瞰した形で分野についての感覚をつかむには、むしろ速報性の高い文献(ウェブや書籍等)の方が適しているかもしれません。多くの研究分野によっては、書籍等でないと、そのトピックについてマクロ的な視野で取り扱っていない、または最新トレンドについて触れていないということもあるかもしれません。

しかし、この点で、情報系分野は非常に恵まれています。分野の最新動向について記したものや、ある程度体系だって説明出来るくらい成熟してきた技術などに関してまとめたものを論文の形で出しているものがあります。この論文を具体的には「サーベイ論文・レビュー論文」と呼ぶのですが、多くの場合、その分野のフロントランナーや著名な方がまとめてくれています。掲載されている論文もその分野の著名な論文誌な事が殆どです。

上述した事の詳細は「サーベイの仕方・先行研究の調べ方」で触れる事としますが、興味をひく文献一つ見つけたら、質のいい文献であれば必ずと言っていいほど参考文献リストが巻末等に載っており、そのリストにある文献をさらにあたってみる事をお勧めします。このように一つの文献から新しい文献へとたどり着き、より深く知りたい場合にはこれを繰り返す事で芋づる式に文献を探し当てていく事になります。

キーワード:「調べたい分野や技術名など」 + 「サーベイ論文(レビュー論文)」

国内の研究よりも国外の研究の方が、最先端な事が多いため、英語で検索する事をお勧めします。その場合はsurvey、reviewまたはtutorialをキーワードにすると良いでしょう。また、学会発表や技術カンファレンスでの講演資料にあたりたいなら基調講演(key note speech)をキーワードにするのも有効でしょう。このような方法で集められた資料にも、参考文献リスト(reference list)が掲載されて事が多いので、そのリストを利用しさらに資料を芋づる式に発見していきます。

このように文献を集めている段階で自分なりに文献リストとしてまとめておくと、後ほどレポート・論文を書く際に役に立ちます。一般的な「レポート・論文の構成」には必ず参考文献リストを載せる必要があります。論文の中で他の研究に言及したり引用をした場合、きちんと出典先を明示しないと剽窃・盗用の疑いをもたれてしまいますので、きちんと参考文献リストで提示するようにします。その際に作成していた文献リストの情報を整えて添付する事になります。「研究の種類」にあるように、自分が行っている研究スタイルによっては、世の中にアウトプットされた文献を体系だってまとめる事が研究成果の場合もあり、まとめた文献リストを元に論じたものが研究成果となることもあります。

情報分野での研究の場合、提案される手法の優劣が客観的に判断出来るように実験等での定量評価がされます。ある意味数字で白黒がはっきりつくため、自分の提案する手法を用いた予備実験でより優れた結果が出た場合、その研究を発表する際に新規性や有効性を示しやすいということにも繋がります。逆に同様な問題に取りかかっていても、いつまでたっても先行研究以上の成果が出ないということであれば、何かしらアプローチを変える等、新しいブレークスルーを必要とします。その際にも再度先行研究調査を行う事で、参考になる手法や組み合わせ等を発見出来るかもしれません。

先行研究調査を行うことは、

そもそもどのような問題が存在しているか?
問題の本質が何であるか?問題の解決が求められているのか?
自分の研究・提案したい手法が分野全体としてどの立ち位置にあるか?
他者がすでに着手している問題かどうか?解決済みであるか?
着手されているのであれば、競争相手がどこの誰であるか?
自分の提案に新規性があるか?
自分の提案の方が他者の提案よりも有効であるか?
自分の手法における客観的評価方法の有無について
を知る上で欠かせない作業になります。そのため、研究活動全体のうち、非常に多くの時間を先行研究調査に費やす事になります。研究活動のスケジューリングを行う際に、先行研究調査に十分な時間がとれるか?は期限内で研究活動を遂行出来るかという実現可能性を知る上で大切です。締め切り間近で先行研究調査が十分に行えていなかった、ということにならないようにしっかり時間を設けて準備しましょう。

「文献調査・先行研究調査、リサーチ・サーベイ方法」にて、より具体的なサーベイ方法について述べます。

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